キューブカフェが1周年を迎えました
こんにちは、林です。
2021年2月15日(月)に試験的にオープンし、その翌々週の3月1日(月)から、毎週月曜日に活動をしてきたキューブカフェが、1周年を迎えました。
おかげさまでキューブカフェは、多くの人が集まってくれる場所に成長しています。この1年間を振り返ってみると、小学生から後期高齢者の方まで、実にさまざまな生き様をもった方が訪れてくれました。
キューブカフェは、多様性をもち始めています。
- ITが苦手な方にとっては「スマホやパソコンなど、身近なITのわからないことがなんでも聞ける場所」
- ITに興味がある方にとっては「ITの技術を楽しみながら学ぶ場所」
- ITを教えたい方にとっては「教えることで自分のスキルも深まる場所」
- ITでプロになりたい方にとっては「共に何かを作る仲間を見つけたり、高め合うことができる場所」
- 人生でちょっと休憩が必要な方が「ほっとひと息できる場所」
- 集う人々の多様な生き様から「人生のヒントがもらえる場所」
僕がこの現状をみて嬉しくて仕方がないのは、このキューブカフェという場所が荒川区の片隅にとても自然に定着して、みなさんの支持によってすくすくと育っているからです。
キューブカフェは、その場の流れで生まれました。その話を書こうと思います。
僕がずっと温めていたアイデアを実現するために最初に選んだ場所は、荒川区ではありません。当時の僕は、場所はどこでもいいと思っていました。まず必要なのは、共感できる仲間でした。
2017年、1,000人を超える人と会いました。なかには、みなさんがご存知であろう有名人とも会いましたし、さまざまな出会いのきっかけをもたらすイベントやセミナーなどにも積極的に参加し、仲間と場所を探していました。
出会いというご縁によって、品川区の西五反田、東急目黒線の不動前という駅のそばで、活動をはじめました。当時から「カフェ」というイメージがありました。そのカフェの名前は、「info.caffe(インフォカフェ)」です。
その頃の僕は、綿密な計画をどう実行するか、どう現実にするか、そればかり考えていて、自分でできることはすべて自分で進めて、悪く言えば周りが見えていない状況でもあったと思います。それでも、「僕が思い描いているものが現実になれば、世界は変わる」恥ずかしながら、そう確信していました。
いろんなものが自然に僕を後押ししてくれていました。人・環境・状況。
しかし人生はそんなに甘くありませんでした。僕の理念・ビジョン・課題意識は、あまりにも真剣すぎました。誰にも伝わらないのです。周囲に真の理解者がいないことに孤独を感じながらも、伝えること、やってみせることを諦めずに突き進んでいました。今なら「失敗経験」からいろいろ学んでいますから、わかることが多々あります。僕には真のリーダーシップの準備がまだ、できていませんでした。
理解者がいない、ということは、どういうことなのか、冷静になってみればわかります。僕の伝え方の問題や、ビジョンを共有するために必要とされるじっくりとした基礎づくりを僕が甘く見積もっていただけのことです。
すべてを背負い込んだ当時の僕にとって、あらゆる仕事の目標が超難問になっていきました。そしてそれを、ひとりで背負い込んでいったのです。僕の知識・経験・根性すべてをぶつけて、盛大にずっこけました。
それでも諦めきれずに鉄を打ち続けました。いや、あれは、自分の命を打ち続けたといえるでしょう。
その結果、僕はさまざまなものを失い、人も失い、心臓を半分失って、ようやく自分の失敗を認めたのです。
それが3年前の話です。
入院をきっかけに、自分の身体を酷使してきた自分を反省しました。神様に借りているこの肉体をぞんざいに扱った罰が当たったと思いました。
それでも、「生きているだけで丸儲け」だということを腹で理解することができました。生きる喜びを、幼子のように素直に受け止めることができたのは、かけがえのない収穫です。
退院後、僕は再チャレンジしようとは思いませんでした。やれるだけのことをすべてやったからこそ、失敗を認めたことによる後悔は無かったのです。心臓を半分だけ残された「新しい肉体」とうまく付き合いながら、できるだけ楽しく生きていく道を探したい。そう思いながら、僕は人生の折り返し地点に近い年齢で、立ち止まって景色を楽しむことにしたのです。
近所を散歩したり、街で生きる人々を観察したり、自分の手のひらをみつめて、どうして手ってこんなに複雑に動くんだろうって子供のような疑問をもったり、河川敷で妄想に耽ったり。いま思えば、いままでの人生で抱え込んでしまったしがらみをすべて捨てようとしていたのだと思います。心が軽くなっているのを感じて、それがじわじわと、魂の奥から湧いてくるのです。「生きている」という幸せを感じ取れました。
僕は変わり続けようとすることをやめました。
すると、今までの人生、走り続けてきたということがよくわかりました。昔の未熟な自分はいつも一所懸命でした。過去のさまざまなシーンを生きてきた自分はいつも全力で、「バカだけどどこか愛おしい、憎めない奴」でした。
そして僕は、そこに至るまでに、どれだけの人たちに支えられたりヒントをもらったりしてきたことでしょう。いつも愛情によって支えられてきたからこそ今の自分があるということを、身に沁みて感じました。
それから、運命の流れのままに。なんの意図もなく、目黒区のとあるカフェでのまみさんとの出会いをきっかけに、僕は荒川に流れ着きました。そして「土と緑」との出会いがありました。
「土と緑」は、いまキューブカフェの活動をしている場所です。オーナーの跡部さんが、しっかりと志をもってやってきた場所に、僕がふらふらっと、蝶のように舞い込んでしまいました。
跡部さんがやっている「金曜カフェ」。近所の常連さんたちが集う場所。僕はたまにそこを訪れるようになりました。
あるとき、金曜カフェの常連である水橋さんがノートパソコンを開いて跡部さんと何かをしていました。水橋さんがブログを執筆中で、ブログツールの使い方がわからなくて跡部さんがサポートしていたのです。
たまたま僕が知っていることだったので、水橋さんに教えてあげました。
――まさにそれが、キューブカフェ誕生の瞬間だとは知らずに。
水橋さん「ここでいろんな人にパソコン教えたらいいじゃない。そういうの必要な人、多いと思うよ」
この場所でやることに跡部さんもまみさんも賛成し、背中を押してくれました。
その一言を受けて僕は、「よっしゃ、ひとつまたやってみるか!」・・・とは、なりませんでした。
以前のように「どう事業化するか」とか「継続性はどう確保するか」とか「ここでやる価値はなんだ」とか、考えたくありません。なぜなら僕としては、もうアレ(品川で失敗を認めたチャレンジ)を繰り返すなんて、ありえなかったからです。もうあの頃のようにはいきません。心臓だってこんなだし、無理がきかない。今よりも体力があって身体的ハンデもなかったあの頃ですら、刃が立たなかった。いちどは志を共にした仲間たちとうまくいかず、感じたあの苦しさだって、あんなこともう一度でも経験したらと思うと、自ら命を断つに等しい行為にしか思えません。
だから僕は、こう考えることにしました。
「週1回、僕の週末の遊びのつもりでやる。それなら無理もないし、どうしたらうまくいくか考えたり悩んだりする必要もないし。やってて無理を感じたらすぐにやめよう」
そして始まったのが、キューブカフェです。
キューブカフェって名前、どうしてこの名前にしたのか思い出せません。
ともあれ、それは始まりました。意図せずに、なにかが生まれた瞬間でした。
いろんな人がきました。
そしてアドバイスもたくさんありました。
人が集うということは、人の想いが集うということだと、安心して思える場所です。
ここに来るために必要なものは、扉を開けて「こんにちは」って言う勇気だけです。
キューブカフェは表向き「IT」を基軸にしています。でもそれは、きっかけなんです。ITじゃなくてもいいんです。むしろ、IT以外の広い広い世界をまるごと受け入れて、つなげていく場所にしたいのです。
「ITは表向き」とは言っても、そこには確固たる自信があります。僕のように「これに関しては誰にも負けない」くらいの何かを持っている人や、持ちたい人に、夢を与える場所でもあります。
ともかく1年が経過して振り返ってみれば、
僕は、以前とまったく違うやり方で物事を進めていたのです。でも驚くことに、荒川で実現しつつあるこの流れこそが、品川で僕がやりたかったことを、芯で捉えていました。
意図せずに、なにかとても貴重なものが生まれました。
貴重なものが生まれたとき、人はそれを育てたり守ったりしたいと思ってしまいます。僕も例外ではありません。
しかしここで「育てる」「守る」という選択はありませんでした。また過去の「背負い込んだ自分」になることは、失敗を繰り返すことにもなるし、なにしろ僕はそんな状況になったら乗り越えられません。
見えている選択肢は、選べないものばかり。ならば仕方がない。そのまま流れに身を任せながら、やれることだけをやる。
だから僕は、温めようとも育てようともしませんでした。
「キューブカフェを始めたのは確かに僕だけど、僕はここを僕の場所とは思っていない。ここを好きだと感じているすべての人の場所だから」
キューブカフェは、人に恵まれました。人が集まってくれて、なにかエネルギーを与えられているかのように、僕の失われたはずの何か、「意思」のようなものが回復していきました。
――人生に勝つためにはどうしたらよいか。
―――勝とうとしないこと。けれど負けないこと。
キューブカフェは今年もさらに成長するでしょう。余計な力をなにも加えずに、成長するためのしっかりとした土壌が完成しつつあるからです。
わたしたちの足は荒川の地についています。けれどもわたしたちの目の向いている先には、世界中の人たちがいます。
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
キューブカフェによくいるおじさん。2匹の大きな猫と暮らしてます。
あっという間の一年でしたね。
わたしも、初めて出会ってからまさかこのようにカフェを一緒にやり、このような成長をするとは思ってませんでしたよ。長年あたためてきたことが実現することは、諦めない限り実現するんだと気づかされる毎週月曜日ですよ。
そして、このカフェで起きてることは皆んなで作り上げていってると言うことも実感してます。
またこれから先も楽しみですね。